「ポリコレ」という言葉を耳にしたことはありますか?
今回は「ポリコレとは何か?」を実例とともに紹介したいと思います。
この記事は、差別や偏見についての内容が含まれています。あらかじめご了承ください。
ポリコレとは?

ポリティカル・コレクトネスの略。
「容姿や職業・性別・文化・人種」などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、
政治的/社会的に公正中立であるという考え方や概念のことを指す。
直訳すると「政治的正しさ」を意味します。
米国において1960年代から70年代にかけての新左翼運動の中で使われ始めました。
一言でいうと、「差別を無くそう」という考え方や概念のことを言います。
ポリコレの身近な事例
機内アナウンス変更(性別への考慮)

機内での英語アナウンスで使用していた
「レディース・アンド・ジェントルメン(女性、男性の皆さん)」
という呼びかけを使うのをやめ、
「オール・パッセンジャーズ(乗客の皆さん)」などに切り替えた。
性別を前提とした表現を改め、性同一性障害など性的少数者(LGBT)に配慮した。
JAL広報部は、呼びかけの言葉について「性別を特定した表現ではなく、中立的な表現が望ましいと考えた」と説明している。
- 女性同性愛者(Lesbian)
- 男女問わず同性愛者(Gay)
- 両性愛者(Bisexual)
- 生まれた時に割り当てられた性別が自身の性自認(簡単に言うと心の性別)と異なる人 トランスジェンダー(Transgender)
の各単語の頭文字を組み合わせた表現 。
ゲーム主人公選択時の文言の変化【性別への考慮】
ポケットモンスターブラック・ホワイト(2010年発売)のキャラ選択画面

2010年に発売されたポケモンBWでは、「あなたは男の子?それとも女の子?」 といった問いかけがされ、
「男性か女性」の二択から選択します。
ポケットモンスター ソード・シールド(2019年発売)のキャラ選択画面

2019年に発売されたポケットモンスター ソード・シールドでは、
「男性・女性」という表記は無くなっており、「見た目と雰囲気」で選択できるように設計されました。
これは、LGBTや人種に配慮した設計になっているといえます。

「男性・女性」ではなく「タイプA・タイプB」という2択から選択するゲームもあります。
一般用語の変更
日本においても、ポリコレの考え方により、用語が言い換えられた事例があります。
従来用語 | 中立用語 | 備考 |
---|---|---|
看護婦 看護士 | 看護師 | 2002年、保健師助産師看護師法改正。男性も職業に就いているため。 |
障害者 | 障がい者 障碍者 | 「害」の字が使われていることに不満がある人の感じる悪い印象を回避するため。 |
保母 保父 | 保育士 | 1999年、児童福祉法改正。 男性も職業に就いているため。 |
スチュワーデス スチュワード | 客室乗務員 フライトアテンダント キャビンアテンダント (CA) | 1996年に日本航空が従来の呼称を廃止。 他社も追随した。 世界の航空会社では、男性も従事している。 |
トルコ風呂 | ソープランド | トルコ人留学生、ヌスレット・サンジャクリの抗議により、1984年に改称。 |



少し抵抗はあるものの、偏見や差別の垣根を取り払う運動は素晴らしいことだと思います。
...しかし、このようにポリコレへの配慮が広まる一方で、行き過ぎたポリコレが近年問題になっています。
エンターテイメントとポリコレ



ここ数年で炎上してしまったゲーム/映画関連の実例を紹介します。
炎上したポリコレの実例 (ゲーム/映画関連)
【FF16】吉田直樹プロデューサー発言が物議に


「ファイナルファンタジー16」の吉田直樹プロデューサーが、2022年11月4日にIGNのインタビューで登場人物が白人ばかりであることに言及され、白人以外(黒人などの有色人種)のキャラクターも登場するのかについて尋ねられた際の回答が、物議を醸しています。
吉田直樹プロデューサーの回答(タップorクリックで展開)
吉田直樹プロデューサーの回答(「一部の人にとってはがっかりすることになるかもしれない」と前置きした上で)
「開発初期段階からの私たちのデザインコンセプトは、中世ヨーロッパの歴史的、文化的、政治的、人類学的基準を取り入れて特徴づけてきました。私たちが伝えたいストーリー、つまり疫病に悩まされている土地のストーリーに最も適した設定を決定する際、地球規模で作るのではなく、範囲を1つの大陸に限定する必要があると感じました。 飛行機やテレビ、電話のない時代に地理的および文化的に世界から隔離された国です。
地理的、技術的、地政学的な制約から、現代の地球や、惑星(と月)全体が国家、民族、文化の集合体であるファイナルファンタジー14のような多様性は、ヴァリスゼアには望めませんでした。しかし、この領域の孤立した性質は、最終的にストーリーに大きな影響を与え、ヴァリスゼアの運命が他の世界と結びついている理由の一つになっています。
最終的には、「ヴァリスゼア」に民族の多様性を取り入れることは重要ですが、非常に大きな世界の一部分にすぎないヴァリスゼアに過剰に取り入れると、最初に設定した物語の境界線に反することになりかねないと考えました。私たちが語る物語はファンタジーでありながら、現実に根ざしているのです。」
Rock Paper Shotgunはかなり批判的な内容で報じており、吉田プロデューサーの発言を「間違ったこと」だとし、「ファンタジー設定における同質性の理由として中世ヨーロッパを引き合いに出すことは腹立たしい」と述べており、「中世ヨーロッパには人種の多様性が皆無だったという嘘を信じていたとしても、FF16は極めて選択的な方法でしか歴史を利用していない。全員、あるいはほとんどの人物を白人にしたのは選択だった」と非難している。
Last of Us2(ラストオブアス2)


炎上のポイントは主に、以下の内容になります。
ネタバレ注意 (タップorクリックで展開)
- 男性主導の物語から、女性主導の物語へ
前作の主人公である屈強な白人男性のジョエルは、本作では新キャラクターの屈強な女性であるアビーに序盤に殺される。ゲームの主人公はジョエルから同行していた女の子であるエリーに変わり、エリーとアビーを中心とした物語が描かれる。 - LGBTキャラクターの登場と、その恋愛描写の存在
本作ではエリーの恋愛対象が女性となっており、その恋人(ディーナ)も登場し、その二人の(女性同士の)恋愛描写が濃密に描かれる。また、女性として生まれたが、その事に違和感を抱き、頭を丸刈りにするキャラクター(レブ)も主要なキャラクターとして登場する


- 上記2点(男性性に対する否定とも取れる描写と、LGBT)を兼ね備えたアビーの存在
実はアビーもまたトランスジェンダーであり、男性の恋人(オーウェン)との性行為を描いたシーンが存在する。
『The Last of Us Part 2』は典型的な「ポリティカル・コレクトネスを意識した作品」であると考えられるかもしれない。
ギルティギア ストライヴ (2021年)


2021年5月、アークシステムワークスが手掛ける対戦格闘アクションシリーズ最新作『GUILTY GEAR -STRIVE-(ギルティギア ストライヴ)』の登場キャラクター「ラムレザル=ヴァレンタイン」の海外版声優に関して、当初配役されていた白人女性のErin Fitzgeraldさんが辞退して、黒人女性のLaura Stahlさんにキャストが変更された。




この背景には、Black Lives Matterの流れで近年海外で支持されている「キャラクターと声優の人種を揃えるべき」という風潮が関連しているようです。
この声優変更に関して、Erin Fitzgeraldさんが自身のTwitterにて「自身がこのキャラクターを演じるのは適切ではない」として、黒人の声優が「より適切に」キャスティングされることを望んだと説明。
Laura Stahlさんはメッセージのやり取りや一連の理由を確認した上で、彼女の対応が素晴らしいものとして感謝のメッセージを送っています。



一応、ラムレザルは褐色キャラなのですが...。


実写版リトルマーメイド(ディズニー)





最近のディズニーからは作品愛を感じられない...。




デモンズソウル(PS5)


ポリコレ配慮でデザインが大幅変更される
PS5でリメイク作品として発売されたこの作品は、「ほとんどのキャラの見た目が大きく変えられており、そのどれもが酷く劣化している」と発売直後に炎上をしました。
アマゾンのレビューには、「ポリコレの影響なのかキャラの不自然な黒人化や黄色人化、ブサイク化が凄い。」といったレビューが多くを占めています。(比較画像は下記リンク参照)



リメイク作品が出るたびに、ポリコレ配慮の改変が無いか心配になる...
有名な大手ゲーム会社の「ポリコレルール」が流出
その流出したデータの1つとみられる内部資料がTwitterで拡散され、大手ゲーム会社が任天堂を悪い例をして取り上げていたためネット上で話題になりました。その資料が下記画像↓


上記画像は、大手ゲーム会社がゲーム制作をする上で、「ポリコレを意識しながらゲーム制作を行う」という内容に関する資料です。
簡潔にまとめると、
- 女性も主人公/メインキャラにする(例としてラストオブアス2、トゥームレイダーの作品が挙げられている)
- 男性=強い、女性=弱い・サポートという役割・考え方はNG(例として任天堂作品に出てくるゼルダ、ピーチ姫が挙げられている)
- LGBTQのキャラクターを、PS5(PS4)の新作ゲームには必ず1人入れなければならない。
- GLAAD(LGBTQの圧力団体)と連携を取り合いながら制作を進める。
- LGBTQのキャラクターは、つねに重要キャラクターであること。
といったルールが記載されています。
まとめ
ここで紹介した実例は、ほんの一部に過ぎません。一つ確かなことは、「ポリコレの押しつけ」と言われるほど、超えては行けない一線を超えているということです。
偏見や差別の垣根を取り払う運動は素晴らしいことではありますが、当事者がとても不快に感じたり、ポリコレがゲームや映画のブランド価値を下げてしまう要因になってしまえば、当然ながら反感を買ってしまい、結果的にポリコレへの印象は悪くなる一方です。
少しでもいい方向に、ポリコレが配慮されていく事を願っています。